
某所で長尾武の『水都大阪を襲った津波』(2012年改訂版)を見掛けたとき、すぐに買い求めようと思った。これは単なる直感に過ぎなかった。しかし、その直感に間違いはなかった。本書は1854年に発生した安政南海地震に見舞われた「水都大阪」の被害状況を調べたものであるが、地震発生の際、「水都大阪」では避難場所を船に求めたものが多かったこと、その結果、地震そのものよりも後から襲来した津波によって船の転覆が相次ぎ、多くの犠牲者が出たことなどが丹念に調べられており、いろいろと勉強になった。当時の震災から学んだ教訓を刻んだ石碑がいまも大正区に残されているという。近いうちにこれを実見したいものである。2012年の改訂版である本書では、安政南海地震における被害状況を踏まえて東日本大震災で襲来した津波の被害や福島第一原発の事故についても語られている。多くの示唆に富んだ一作である。
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