
ゴールデンウィーク中、とある本を探して書架をあさっていたところ、ボリス・グロイスの『全体芸術様式スターリン』(現代思潮新社)が出て来た。懐かしい本である。なかを開くと、私自身が引いたダーマト線も随分あった。別の本を探している過程で見つけたものであったため、今回は読み返す時間がなかったが、『全体芸術様式スターリン』はロシア・アヴァンギャルドがスターリン流の社会主義リアリズムに「敗北」していく要因をアヴァンギャルド芸術そのものに求めた論考ではなかっただろうか。当時、仕事の関係で花田清輝の著作を良く読んでいた。そんな私にとって、「敗北」の要因をアヴァンギャルド芸術の内部に求めた本書の指摘はさほど斬新なものではなかった。というのも、アヴァンギャルドと社会主義リアリズムとの関係について、花田清輝がそのようなことを示唆していたからである―花田清輝はそれを「敗北」とは受け取ってはいなかったはずであるが―。それでもあちらこちらにダーマトが引かれているのは、花田清輝の言説が、文字通り、数行程度の示唆の次元にとどまっており、その「敗北」の軌跡が詳細に跡付けられてはいなかったからである。その意味で勉強になった論考である。いまから思うと、日本のポストモダンが反動化し、現在にいたった経緯とその要因を理解するにも役立つ論考なのではなかろうか。
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