2010年08月23日

伊藤和『伊藤和詩集』2

伊藤和『伊藤和詩集』1→こちら

私の手許には『伊藤和詩集』(1960年9月/国文社刊)がある。収録されている詩篇の数は56篇。『現代詩大事典』でも紹介した『泥』所収の27篇のほか、戦前から戦後にかけて発表された作品が収められている。巻末に付け加えられた秋山清の「伊藤和と『馬』事件」によると、本作の編纂には秋山清が関わっているようである。「伊藤和詩集の出版が決まったとき、私は『あつめられるだけの作品をもってすぐ上京するように』と彼に手紙をかいた。一九五六年の十一月」のことであった」「やがて十二月になって案外元気にやってきた。伊藤は、そのとき『これだけしかないョ』と、一九三〇年に発禁になった詩集『泥』の写しと戦後の作品をすこしばかりもっていた」。こういった秋山の回想によると、『伊藤和詩集』に収録された詩篇が伊藤和のすべての作品ではないことが読み取れる。あくまでも幾つかの時期に発表された作品を集めた代表作選集といったところであろうか。しかし、これだけをとってみても、農民詩人としての伊藤和の骨太さやたくましさは充分にうかがえる。例えば、「無題」は農民としての所感を力強く謳い上げた詩篇である。私の好きな作品の一つである。

そして十二時にもならないうちに腹が減って
なでしこのきざみを吸いつけると空き腹が非常にグルグルと鳴る つまり元気よくラッパ屁が出た
側でとろとろに溶けあってる泥にどっかりと坐って蛙が鳴いている
おれはそいつが好きになっている
とにかく百姓はよく屁をたれる
手を濡らさない奴の九鱈ない発想なんか屁で軽蔑してやればいい、あついらにおれ達の咽喉を使うまでもないことだ
深い泥の中には働く者だけがいる
で、いつもの青空を見ると頭のてっぺんにでっかい雲の峯が現われている
暑くなるからお互に気をつけようぜ!
みんなよ。
(『伊藤和詩集』30〜31頁より)
(続く)

伊藤和『伊藤和詩集』3→こちら
伊藤和『伊藤和詩集』4→こちら
伊藤和『伊藤和詩集』5→こちら
伊藤和『伊藤和詩集』6→こちら
ラベル:伊藤和
posted by 乾口達司 at 23:27| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック