ラベル:雨
2009年03月21日
雨のなか。
あなたが出て行ったのは雨が激しく降っているときだった。そんなに急に出ていかなくてもいいではないか。あなたの出かけるのを前にして最初はそう思ったものだ。しかし、あなたにとって、降りしきる雨のなかの出立には大きな意味があったのだろう。静寂さが支配するなかでの出立は自分の性にあわない。そう思ったのに違いない。思えばあなたはいつも人の輪のなかにいた。決して一人で静かに時を過ごすような人ではなかった。そう考えるとあなたの判断は決して間違いではなかった。いまあらためてそう思う。雨があなたの足跡を消してゆく。歩いてゆくそのすぐそばから消してしまう。足跡すら残さずに出てゆくあなたに対して、取り残された私はどう振る舞えばいいというのか。戸惑いがないといえば嘘になる。しかし、いまはあなたの出立を静かに見守ろう。私の前から去っていったあなたは次に誰と出会うのだろう。そして、私は誰と出会うのだろうか。いつの間にか窓からは陽が差し込んでいた。前夜の雨はすっかり上がっていた。あなたはもういない。いまごろはどのあたりを歩いているのだろうか。せめて自分だけは見失わないで。また会えるその日まで。雨上がりの朝、あなたが大切に育てていた木蓮が真っ白な花を咲かせていた。
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土砂降りの中、那智まで西国礼所めぐりに行ってきました。
バケツをひっくり返したような雨のなか納経帳を濡らさないように抱えて参って来たよ〜!!
いろんな出会いもあったし、良しとするか!!