2012年07月01日

後藤明生を読む会(第10回)

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後藤明生を読む会(第9回)→こちら

昨日は後藤明生を読む会の第10回目がもよおされた。今回のテクストは『夢と夢の間』(集英社/1978年1月)である。いつものように代表の発表者が基調報告をおこなった。その後、参加者で討議がおこなわれた。今回も話題となった事柄をアトランダムに列記しておく。

・『夢と夢の間』が新聞小説として連載されたこと。
・新聞小説である以上、文芸雑誌に発表される小説よりも一般の読者に対してわかりやすさが求められる。したがって、『夢と夢の間』には、文芸雑誌に発表される後藤明生の作品とは異なる特徴が見出せる。
・もっとも大きな特徴としては、「ロッキード事件」や「ディスクジョッキー」「モデルガン」あるいは日ソの政治的対立など、当時の時代状況を表した事物や事件が丹念に織り込まれていることが挙げられる。
・『吉田健一頌』における吉田健一の「は」の使い方(松浦寿輝)と「山川次郎は私立大学の講師である」という書き出し部分における「は」との比較。
・それにもとづいて後藤明生の小説らしさが若干薄らいでいること。しかし、新聞小説という制約のなかにあってみずからの文学観を少しでも出そうと試みられていること。
・山川と『挟み撃ち』において設定されている山川との共通性と差異について。
・書き出しの一節がゴーゴリ『外套』の冒頭の一節を意識して綴られていること。
・そういった点を踏まえると、書きはじめた当初の計画では山川版『挟み撃ち』を執筆しようとしたことも考えられること。
・同窓会における「オカッパ頭」について。「ニコライ堂のタマネギ形の屋根」が「オカッパ頭」を連想させる契機となっていること。
・繰り返し語られる「旧姓矢野の女性」という表現について。
・子どものいない石川が子ども部屋無用論をとなえているという矛盾と滑稽さ。
・そして、その石川と最後まで付き合う山川の態度が指し示す後藤明生の対人関係論について。
・散文論や敬語論、ポルノ論など、物語以外の「論」の要素がふんだんに盛り込まれていること。
・バラバラな家族との関わりとそれによって生起して来る山川の相対化について。
・吉田健一の『時間』と後藤明生における時間感覚との共通性について。
・さまざまな「箱」の頻出について。
・「紐」の持つ象徴性について。
・「四人の付き合い」=「悪魔との付き合い」=関係性について。
・吉田健一と阿部良雄におけるヨーロッパ体験について。

次回の研究会は8月のお盆を予定している。『しんとく問答』(講談社/1995年10月)について、私が発表者となって討議をおこなう。
ラベル:後藤明生
posted by 乾口達司 at 19:40| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 自己 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする