2008年11月13日

アメリカ大統領選挙を終えて3

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私は何も冗談でいっているのではない。皮肉でそういっているわけでもない。2001年に誕生した共和党政権がアメリカの「チェンジ」をたくらんでいたことは政権の内部に「ネオコン」(neoconservatism新保守主義)を導き入れた時点であらかじめプログラムされていたことである。ネオコンがモンロー主義に代表されるような伝統的な保守主義(conservatism)ではないことにあらためて注意を喚起するべきである。ネオコンはスターリンによる一国社会主義を批判し、世界革命としての永続革命論を標榜したマルクス主義者トロツキー(トロツキズム)の流れを汲んでいる。その歴史的な経緯を踏まえるならば、彼らが政権発足の当初から「保守」という合言葉を隠れ蓑にしてアメリカをその根底から「チェンジ」しようと構想していたことは容易に想像がつくはずだ。民主主義を世界に輸出するという名目のもとにアフガニスタンやイラクに侵攻し、世界の警察としての威信を著しく低下させた。軍事費の増大によって国内経済を疲弊させた上に数年後には破産者が続出することが容易に予想された低所得者向け住宅ローンを積極的に推し進め、国際的な金融危機までも招き寄せた。21世紀に入って次々と誕生した南米の左派政権やイランの政権のように、反米や反グローバルゼーションを標榜する勢力の台頭までも誘発した。彼らはアメリカそのものを内部から崩壊させ、一国社会主義ならぬ一国覇権主義としてのアメリカの世界支配を崩壊させたのである。トロツキーがかつて提唱した「革命の輸出」「世界革命」がこのようなきわめて歪な形で進行していることにわれわれは瞠目しなければならない。したがって、しばしば指摘されるように、ネオコンを抱え込んだ共和党政権がそのあまりの横暴さと見通しの甘さゆえに国家運営や政権戦略を破綻させてしまったと見るのは適切ではない。彼らはむしろ反対に所期の目的を見事に達成したのである。実際、アメリカ発の金融危機に対処すべく、先進国および有力な発展途上国が参加する金融サミットG20が11月15日に開かれる。その会議は21世紀のブレトン・ウッズ会議とでも呼ぶべきものになるだろう。そこでは従来のアメリカ主導の一極集中的な政治的・経済的体制からの転換が話し合われるはずだ。今後も繰り返し発生することが懸念される金融危機を可能な限り押さえ込み、リスクを分散させるという観点からEUや中国、ロシア、南米といった幾つかの経済ブロックがアメリカ(ドル)の一極支配から脱却してゆく。その方向性も将来にわたってゆるやかに推し進められてゆくことだろう。もちろん、それは資本主義の終焉を意味しない。反対に資本主義を延命させるための強硬手段に過ぎない。(続く)
posted by 乾口達司 at 22:13| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 想い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする